セルフコントロールの古典的理論

ひがしすみだカウンセリングルームです。今日はセルフモニタリングのお話。

認知行動療法でも重視されるセルフモニタリングですが、古典的な理論についてご紹介します。

バンデューラの自己調整モデル

セルフ・コントロールに関して、バンデューラは、人間行動が、外部からの外的報酬や罰に必ずしも依存しない事実を強調しています。そしてほとんどの人間行動は即座の外的強化が与えられない状況で生起していて、その場合、ほとんどの活動は自己強化のコントロールを受けているとしているのです。

そのような事例の一つとして、バンデューラは作家の推敲を挙げています。作家は世間に認められる作品の基準を、あらかじめ自分の中に持っていると推察されます。そして自分の書いたものに満足するまで、何度も何度も最初の文章を推敲する行動について、彼は即座の外的強化(賞賛など)を必要としていないというわけです。

セルフコントロールのどのように行われるか

では、自己強化がどのように行動に影響しているのでしょうか。

バンデューラは自己強化のメカニズムについて、主にその動機づけ機能によって説明を試みています。彼は自己強化の役割について、ある遂行基準を自ら設定し、それが達成できないときは自罰し、それを達成できてはじめて自ら報酬を入手し満足することによって、人々は遂行が自己の定めた基準に適合するよう自ら努力を喚起することになると考えたのです。

それは、次のような要素過程としてまとめられます。まず遂行行動が量・質などいくつかの評価軸によって変動し、次にその遂行が自己強化に足るものであるかどうかを、社会的比較や個人的基準に照らして判断します。この判断過程に関する諸要因のなかでも、バンデューラは特にモデリングの影響を重要視しています。モデリングとは社会的観察による行動の変化のことを言いますが、行動は複雑な判断過程を経て、自己反応を引き起こすことになるのです。

自分の行動を変えるためには自分のことをよく知るところから

「多くの人間行動が自己満足感、自尊感情、自己失望、自己批判などといったさまざまな形の自己評価的結果によって調節されているのである」(祐宗・原野・柏木・春木,1985)と彼はいいます。行動変容において外的強化も重要ですが、本人が目的をもってそれに基づいた評価をする、いわば自己観察もまた、行動を変えていくのに強く作用します。しかし、元気がなくなると、この評価システムが正常に機能しなくなり、ネガティブに評価するようになってしまいます。

このモニタリングシステムを見直し、行動を変えていくことで、より正常な行動プロセスを取り戻していくことが重要です。こうしたプロセスに気が付いていくのは一人では難しく、モデリング課題を設定するのも大変です。今の評価システムは適切か、そして、どのような課題が適切かを考えていくことが、「自分を見直す」ということなのかもしれませんね。


〇引用文献
バンデュラ.A.(編)原野広太郎・福島脩美(訳)(1985) モデリングの心理学-観察学習の理論と方法 金子書房
祐宗省三・原野広太郎・柏木恵子・春木 豊(編)(1985) 社会的学習理論の新展開 金子書房

2018年02月21日