ひがしすみだカウンセリングルームです。
今日は、自己愛について。
自己愛は人に欠かせないもの
自己愛というと、自分を愛するということから、ナルシシズム、自己中心的な人と捉えられがちですが、人が生きていく上では極めて重要なものです。
自分で自分を愛するということは、過去の養育者との関わりの中で十分受け入れられた体験が内在化し、自分を愛することができるようになるわけです。そしてそれは自信やに繋がり、そこから派生して、自律心や、自己の感情コントロールに結びついていきます。しかし、自己愛が十分に形成されていないと、人は不安になり、自己愛を満たしてくれるものを求めることで、欠落感を埋め合わせようとします。自己心理学者のコフートは、こうした自己愛の保証作戦のことを、「自己の修復」と呼びました。
他者に認められないと自分が維持できない
自己愛が満たされなかった人は、不安定な骨組みだけの建物のような状態になります。立っているだけでも非常に危うい状態になるわけです。
建物は柱だけでなく、壁などで支えられるわけですが、不安定な自己構造を持った人は、なけなしの自己愛をふくらませること(肥大化)で建屋を支えようとします。こうすることによって建物は一見安定しますが、元手が少ないので、常に、自己愛を満たすエネルギーをどこからか調達する必要があります。
そのために、自己愛的と言われる人は、他の人からの称賛を求めたり、自分が前に出て注目を浴びようとするわけです。そういった行動が、他者から見ると自己中心的と見えてしまう。こうした過剰な自己称賛欲求は、不安定な建屋を守るために起こってくるものと言えます。
あるものを守るために他者評価を避ける
逆に、不安定な建屋を揺らさないように、最小限のエネルギーでやり過ごそうとする人たちも現れます。揺らさないように、傷つく場面から撤退することで、自分を守るわけですが、常にエネルギー不足のため、他人を批判し、価値下げをすることで、相対的にエネルギーを獲得しようとします。
こうした自己愛の傷つきを抱えている人々にとって、不安定な建物を脅かすような事態、例えば、他者からの興味関心の撤退、肥大した自己愛を否定するような困難な現実などは、極めて自己を脅かす脅威とみなされ、過剰に攻撃するようなことにも繋がります。
健康な自己愛を育む
まず大事なことは、認められ、その体験を原資として、自己愛を保つことを可能にする、健康な自己愛を育むことが重要であるとコフートは述べています。自己愛の発達の筋道について、まずは、共感され、自己の感情を映し返されることが、自己の回復の第一歩です。自己心理学に基づいたカウンセリングはこのようなプロセスを援助する有用な方法と言えるのです。