適応障害にかかわる潜伏性の問題

 

適応障害:環境ストレスによる不安と抑うつ

過労や職業上の挫折、能力上のミスマッチ、職場の対人関係の中で、うまく行かないことが重なって急性の抑うつ状態――例えば、急な不安感、会社の行くのが億劫、頭が回らない、食欲がわかない、眠れない、何度も起きてしまうなどの様々な心身症状、に至ることがあります。これを適応障害といいますが、軽度のものは短期間の休養で改善することがしばしばあります。早ければ一〜三ヵ月ほど休むことで、抑うつ症状、例えば、やる気が出ないとか、強い不安感とか不眠などは消失していくことが多いようです。ときには抗うつ薬などの助けもあると改善が早くなることも多いようです。

適応障害の潜伏性の要因

シンプルに過労等が原因であれば、休職、休養を取ることで解消することが多い印象ではありますが、そういう方ばかりではないようです。過去の家族関係や、いじめなどの対人葛藤といった潜伏性の問題を抱えながらも、これまで危ういながら保たれていたバランスが、過労や環境の変化などを契機にあらわれ、急性抑うつ状態や適応障害に至ることがあります。

親との関係、家族における地位、いじめなど、過去の体験と、似たような体験、状況にはまりこむことでストレスが生じ症状が引き起こされるようなこともあるように思います。特定の状況だと委縮してしまいやすいとか、関心を引くために頑張りすぎてしまうとかその形は様々ですが、自身の課題のバランスが崩れたものの場合、自分のあり方など見直す必要のものもあるように思います。

「元に戻る」ことを焦らないで

 ある意味、危ういバランスを維持することは、それ自体が、ほぼ「限界」と言えるでしょう。そこに負荷がかかって限界が来るように思います。「限界」というのはリミッターを外した状態ですから、維持することができずに息があがる。息があがって初めて限界に気づくことも少なくないですが、そのときには手の打ちようがなくなっていることもしばしばです。多くの方が、「元の通りになりたい」と思われますが、元の通りに戻ることは、限界状態に戻ることになりますから、再発のリスクが高くなります。元の通りに戻ることが、必ずしもご自身の人生にとって適したものか限りませんから、そもそも不調をきたしたことの意義についても考える必要があると思います。精神科医の中井久夫は、「病を得る」ということを言っていますが、「せっかく病を得たのだから、大事にしなくてはいけないね」というそうです。あいにくと自分という乗り物は、代わりがききません。多分、人生は7割くらいがちょうどいい。

ストレスに伴う身体の声に耳を傾けて

急性ストレス症状は、強い不安感焦燥感を伴うことも多いですが、心理的不調に先駆けて、眠れない、途中で起きてしまう、といった睡眠の障害が出ることが少なくありません。眠れないとか、食欲が無いといった出来事を軽く見るのはあまりおすすめできません。まずはしっかり眠れる環境を作ることが肝要ですが、そう簡単に眠れるものでもないでしょう。お薬の力を借りてでも眠りを確保することは重要です。
 眠っていない頭で考えることよりも、よく眠った頭で考えることのほうが、冴えているだろうことは言うまでもないことです。眠ってない頭で考えることにろくなことはありません。できればカウンセリングも、よく眠った頭で行えるほうが、やはり効果はあるように思います。

適応障害において、身体のケアと心のケアは必要なことだと思います。心のケアのひとつとして、カウンセリングを通じたお手伝いができればと考えています。

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2019年04月19日