感情抑制傾向の人は健康を遠ざけやすい?

 

昔々、健康行動と感情抑制について研究していた時期がありました。少し思い出しながら、感情の表出と抑制が健康維持に及ぼす影響についてお話したいと思います。

怒りっぽい人は健康を遠ざける

 感情表現の要素と健康行動の効力感の関係がわりとあるようで、攻撃的自己表現が多い人は、病気に対する対処行動について消極的で、健康を自分でコントロールできると思えない傾向があるようでした。特に病気に対して積極的に対処をしない傾向が強い。過去の研究から、攻撃的感情表現をする傾向が強い人は、アルコール消費量が多く、セルフコントロール型コーピングの欠如によって、健康行動が抑制されることが知られています。怒り・敵意など攻撃的感情の表出傾向が強い場合、計画・セルフコントロール型コーピングを行わない(井澤・児玉,2001)のです。

気持ちを隠す人も健康を遠ざける

 その一方、感情抑制もまた、健康行動の効力感をよくせうする傾向にあるようでした。感情抑制は健康行動をとれる自信を低下させる。つまり、攻撃をする人も、抑制してしまう人も病気に対する対処行動を積極的に取りづらい傾向があることがわかりました。
 感情抑制傾向が強い人は感受緒の言語化をすることが苦手で、自己の主観的感情を正確に見極めることが難しく(福西,2000)、そのため身体状態にも気づきにくいといわれる(平木,2000)。そのため健康に関する問題の認知がゆがみ、セルフケアの実行が抑制されるのでしょう。

 さらに、感情の表出および抑制が健康行動におよぼす影響について調べると、感情抑制のうち「内気」と「服従性」は積極的な健康行動を抑制する効果があり、一方「萎縮」が、健康行動を行える自信を抑制してしまう。

一見正反対に見えて根は同じ

 怒りの表出も感情抑制も、背景にある無力感の表現という点では似たようなものです。出てくる形が、周りに向くか、自分に向くかの違いしかありません。無力感の背景にあるのは攻撃性でしょう。人に迷惑をかけてしまうから、今の自分はつらくないから、あるいは悪いのは周りであって自分は何ともないと思い込んで、自分の心身の声に耳を傾けづらくなっていることはありませんか? 

自分の体のケアは、やはり自分が自分にどれくらい関われるかが一番大事なことです。援助者は、魔法のように何かを「直し」たりすることはできません。回復がしやすいような環境を共に作って、自己治癒力を促進するようお手伝いすることくらいしかできないと思っています。自分の感覚を明らかにしながら、抱え込みすぎず、適度に表出していくお手伝いができればと思っています。

土田恭史. (2007). 感情表現と健康行動との関連--感情抑制が健康行動エフィカシーに及ぼす影響の検討. カウンセリング研究, 40(1), 51-58.

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2019年04月25日