自己愛人格障害の治療

 

ひがしすみだカウンセリングルームです。

今日は自己愛パーソナリティ障害の治療について少し書いてみたいと思います。自己愛パーソナリティとは誇大性(空想または行動における)を特徴とする、パーソナリティ障害で、賛美されたい欲求、共感の欠如を特徴とするものです。精神病薬も効きにくいのが特徴です。

自己愛パーソナリティの診断基準

 自己愛パーソナリティは、①自分が重要であるという誇大な感覚、②限りない成功、権力、才気、美しさ、あるいは理想的な愛の空想にとらわれている。③自分が “特別” であり、独特であり、他の特別なまたは地位の高い人達(または団体)だけが理解しうる、または関係があるべきだ、と信じている。④過剰な賛美を求める。⑤特権意識(つまり、特別有利な取り計らい、または自分が期待すれば相手が自動的に従うことを理由もなく期待する)⑥対人関係で相手を不当に利用する(すなわち、自分自身の目的を達成するために他人を利用する)。⑦共感の欠如:他人の気持ちおよび欲求を認識しようとしない、またはそれに気づこうとしない。⑧しばしば他人に嫉妬する、または他人が自分に嫉妬していると思い込む。⑨尊大で傲慢な行動、または態度、のうち、五つ以上当てはまる場合に診断されますが、こうした誇大的な態度のほかに、傷つくことを過度に恐れるような形で、自我理想に固執してしまうような形もあります。

治療につながりにくい

 自己愛パーソナリティの人はなかなか変わっていくのが難しいちわれます。本人が困らず、周囲が困ることが多いので、自覚的に面接にいらっしゃることは少ないです。でも抑うつを感じて、あるいは周囲との不適応を感じていらっしゃることは十分にあります。その中で、自己愛の問題に向き合わざるを得ないときもありますね。

 そもそも、自己愛の病理とは、共感不全をペースに自分という構造に欠損が生じ、自己評価調節機能と緊張緩和機能がうまく機能しなくなってしまった状態です。自己をかろうじてまとめることに精いっぱいで、自己評価を保ったり、他人に共感性を示すことが困難になってきます。いわば、自己をバラバラにならないように、ぐっと固めて修復しようとしているのが今なのですから、それを手放すこと、すなわち治療が必要だと自分をみなすことは、自分が脅かされるような体験となるのでしょう。

健康な自己愛では、自己は一定の構造の中に、○○という自分、△△という自分が共感され保証されて自己愛エネルギーが充満しています。そういった健全な自己愛が、自己という構造(骨組み)を満たして支え、ちょっと揺れても、動揺しなくても済むようになっている。

一方、共感不全によって一部は共感され、一部が共感されないと、自己という骨組みを支える内容物に密度の差が生じ、隙間ができてしまい骨組みを支えきれなくなります。その状態を自己の断片化といいます。

自己の断片化

 断片化が起こると、自己の構造を支えきれなくなるわけですから、動揺するようになります。いわば欠落を抱えた状態です。そこで、人はなけなしの自己愛を肥大化して、自己の構造を修復しようとする。自己愛を風船のように膨らませて構造を満たそうとするわけです。風船で骨組みを支えるわけですから、ちょっと揺らされてしまうだけで、自己は危機にさらされてしまうわけです。そのような無理をしている以上、現実がそれに見合っていなければ、危機となってしまう。自分はすごいと思っている以上、実際にすごくなければ、おかしなことになるわけですし、人はそれを称賛しなければ、内面と現実が大きく乖離してしまうわけです。賞賛が得られなければ、自己の構造不全が修復されませんから、抑うつ的になったりします。自分には価値がない、死んだ方がいい、と思い込み、自己破壊的になったり、不全感を感じて引きこもったりする。一方で、強い怒りがわくようになる。自分がこんな惨めな思いをするのは周りのせいだ、周りが自分を認めないせいだ、こんな惨めな思いをさせる周囲を許せない! こうして爆発をすることになるのではないかと思います。高齢者のクレーマーとかキレるとかいう現象につながるでしょう。どちらにしても自己破壊的ですし、このような自己修復の試みも一時的なその場しのぎでしかなく、自己不全感が消えることはなかなかありません。修復に多量のエネルギーが使われるので、この状態が続けば自己の統合がなされないままであり、断片化は維持され、自己不全感が強まります。

ひきこもりになることも

非精神病性のひきこもりの多くは、自我理想の問題を抱えているといわれています。こうあるべき自分と、現実の自分とがひどく乖離しているのではないかと思います。対人恐怖症、不登校、退却神経症、ひきこもりは疾病論的にはDSMにおける社交不安障害から回避性パーソナリティ障害までのスペクトラムに位置しているといわれますが、これらは自己心理学的には自己愛の障害という幅広い問題領域を形作っているといえるでしょう。彼らは、自己愛的な傷つきに対して激しい怒りを持ち、また傷つくことを怖れ、空想的な理想と現実の自分との間で葛藤を抱えていることがしばしばあるように思います。どこかで、自分の自己愛の問題に向き合う必要があるのです。

自己愛の問題のカウンセリング

自己愛の問題を共感不全に端を発すると考えるならば、そのカウンセリングは、共感をベースにしたものとなります。人の自己愛は、共感され、理想化され、脱錯覚されることで、発達していきます。それは治療においても同様です。治療者は共感的で理想化される対象としての役割を引き受けながら、次第に、完全無欠の存在ではなく至らないただの人であると気が付いてもらいます。その過程で、治療者のもつ安定した自己機能を取り込み、自己の欠損を埋める新たな心理構造の構築を援助していきます。いわば絶対的に依存させ甘えさせてくれる対象はこの世にいないことをゆっくりあきらめていくような形です。この過程は急速には進みません。そのため、自己愛の問題は、共感的な治療関係を醸成し、じっくり、時間をかけて、少しずつ変化を受け入れてもらうのが、面接の核となります。

 

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2018年07月08日