認知的に見た描画の機能

 ひがしすみだカウンセリングルームです。
 今日は描画療法にかかわるお話。

 描画は、絵を「描く」プロセスと「見る」プロセスが存在します。たとえばMBATなどは、課題(問題解決イメージやセルフケア)に沿った描画をおこない、それに伴う情緒的体験を十分に体験し、それを言語化し、適応的な形へと応用するために話し合うことで心理援助を行うものです。
 いわば、課題を描出し(外在化)、それを見る(客観視)ことで、モニタープロセスと、プランニングおよび評価プロセスを進めようとするものといえるでしょう。このような点から、描画療法はメタ的視点で自己内省を促す構造を持っていると推測されます。しかし、描画を描くだけではそのような点に気づくことは少ないのは想像に難くないことで、このような取り組みにおいて、絵を用いた会話を、よりクライエントが実行しやすくする工夫が必要といえます。
 我々の調査では、マニュアル的なPDIによる接近は、被験者にとって「自分が何をしているのかを知る足がかりにはなるが、自由に話しにくくすることで、情緒体験を抑制する」傾向が見られた。PDIは現前の作業の手続きを明確化する機能があるが、ドラマ化するだけでは十分ではないことが見て取れ、自分のことと関連付けられる形が必要ではないでしょうか(認知-物語アプローチ参照)。
 認知-物語アプローチはナラティブセラピーの応用的なアプローチで、描画の登場アイテムのなかの主人公の同定からその感覚や感情、認知などを尋ねた上で課題を設定させ、それを自らの課題と関連付けて考えさせる、課題設定的なアプローチであるとともに、物語的接近により、自己の状態の客観視と自己評価を求める、メタ認知プロセスを重視する方法といえます。
 メタ認知について、Zimmerman(2008)は自己調整の重要な要素であることを指摘している。ここでのメタ認知は自己省察(評価)-予見(efficacy)-遂行コントロール(目標の推定とモニタリング)の相互プロセスで成り立っているものを指します。
 張(2012)は自己調整の失敗を計画、実行、評価に分け、その多くが、①計画(efficacy・目標設定)の失敗、②実行(断片的なモニタリング)、③評価を避ける傾向が特徴として見られるとしました。
 これに対して、この三つのプロセスの支援として、モニタリングを行う課題や、自己評価を適切に行う課題などに取り組むことが、自己調整の促進に有効であったと述べています。描画を用いることで、一人では達成しにくいメタ認知=行動している自分を認識すること、に接近していくことができるのではと考えています。

2018年01月11日