つい食べ過ぎてしまう心の要因-行動科学における肥満研究

 ひがしすみだカウンセリングルームです。今日は肥満とこころのお話。

 肥満者増加の背景には食生活や食環境の変化を受けて、食行動が大きく変容したことがあげられます。心理学(食行動科学)の領域における肥満研究は、主に肥満者はなぜ食べ過ぎるのかという問題と、食べ過ぎないようにするためにはどのような方法が効果的かという問題の2点について行われてきました。

 過食には、さまざまな心理的要因があげられます。外的刺激によって引き起こされ(外発反応性説)、また不安など内的な負の感情によっても引き起こされる(情動反応説)ことがわかっています。さらに、ダイエットなど継続的な摂食の抑制は、ストレスなどが引き金になって過剰な摂食(脱抑制による反対調節)を導くことが知られています(抑制的摂食説)。

 これらの心理的要因について、新しい食行動科学の観点から見てみると、食べ物が体に入る蛇口には二つあって、一つの蛇口は抑制的摂食、もう一つは情動的摂食となります。抑制的摂食はさまざまな実験が行われていますが、ダイエット中など摂食を抑制している場合に、抑制がはずれると過食に走るという傾向にあることがわかっています。
 ちなみに日本人の体格がどのように変わったのか、20歳男女の体系の経年変化をBMIから見ていきますと、この50年間で女子は平均22.5から20.5と痩身化しているのに対して、男子は21から22と太めになってきています。現代社会はマスメディアを中心に、特に女性に対して「痩身化の圧力」を目に見えない形でかけています。痩せるためにいくら摂食を抑制しても、その行動そのものが過食に走らせてしまうことがあるのです。

 また、情動的摂食という点からみると負の感情は摂食を促進する傾向にあります。感情にはいろいろあって、負の感情とは怒りや悲しみ、恐怖、緊張感などの感情別に空腹感と食欲がどのように相関するか聞いたところ、負の感情は摂食を促進することがわかっています。反対に喜びや安心感といった感情の場合は、満ち足りているせいか空腹感もあまり感じず、食欲もあまりわかないことがわかっています。

 このように抑制的摂食と情動的摂食の関連から見ていくと、痩せたい感情からダイエットを行うことで、慢性的な欲求不満を起こし、これが負の感情と相まって食べ過ぎたり、抑制が外れると過食に走ったり、ということになるのです。過食の怖さは体重の変動だけではなく、健康障害にもつながります。食べ過ぎたあとにすぐに吐き出したりすることが常態となれば、食障害を起こしかねません。自尊感情が低下すれば、ますますストレスもたまり、さらなる過食につながります。

 さらに最近、アメリカにおいてユニークな研究が発表されています。食べられるという環境にある場合、肥満者は外的刺激に過剰反応をして、つい食べすぎてしまうというというのです。
 肥満者と標準体重者の二つのグループに分けて、クラッカーの味を判定してもらうという実験の中で、判定のためにクラッカーは何枚食べてもいいのですが、クラッカー前にサンドイッチを食べる場合、食べない場合に分けて様子を見ます。標準体重者の場合は、サンドイッチを事前に食べている場合は当然、そんなにクラッカーの枚数は食べられるものではありません。ところが肥満者の場合は、サンドイッチを事前に食べているほうが、クラッカーをたくさん食べる傾向にあるのです。
 このことは「いつでもどこでもおいしいものが容易に入手できる環境下では、ついつい食べ過ぎてしまう」ということを意味します。過食を導きやすい食環境下におかれているが故に、肥満になりやすいというものです。

 このように食行動(特に摂食の収量)は、一般的に無意識のうちに起きるもので、最近の研究では経験により獲得され維持されてきた行動(習慣化された行動)であり、心理的要因の影響を強く受けることが明らかになってきました。この事実にもとづき、従来の食事療法を見直してほしいと思います。個々の肥満者のおかれている食環境を見直さないまま、シビアな食事療法を行うとますます抑制感情を強め、負の感情が生まれてしまうからです。

2018年03月14日